パートで多く働くと、負担の急増もあり ~年収の壁 社会保険面~
- 真本 就平
- 2024年10月18日
- 読了時間: 5分
更新日:2024年10月24日
夫婦の働き方として、片方が主な稼ぎ手となり、
もう一方がパートタイムで働きに出る際、
結婚相手の扶養を受けられる範囲内になるよう収入を抑えることは、
昔からよく行われていました。
これ以上働くと税金や社会保険料に影響する限界のことは、
「年収の壁」と呼ばれており、税金面について以前のブログで紹介しましたが、
今回は社会保険の面を話題にします。
そもそも社会保険とは、労働者対象の健康保険と厚生年金保険、
国民を広く対象にした国民健康保険と国民年金保険を指します。
雇用保険や労災保険を含めて、この言葉を使うときもありますが、今回は除きます。
ここで「壁」を説明する前に、本人が収入を得ていない中で、
結婚相手から扶養されているとき、社会保険がどうなっているかをお話しします。
結婚相手が会社員や公務員など、働きに出て、健康保険に加入していると、
その結婚相手の扶養を受ける「被扶養者」として、追加の費用を負担することなしに、
保険診療など、健康保険上の給付を受けることができます。
国民年金については、このような方は「第3号被保険者」に該当するため、
国民年金保険料を支払う義務はなく、将来に年金を受け取れる資格が生じます。
結婚相手が自営業者などで、国民健康保険に加入していると、
被扶養者ではなく、自分自身も国民健康保険に加入して、給付を受けるのですが、
均等割(頭数に応じる分)の保険料を世帯主(結婚相手)が支払うことになります。
国民年金については、「第1号被保険者」に該当するため、
令和6年度現在、月16,980円の保険料を支払う必要があり、
世帯主(結婚相手)にも支払う義務が課されます。
「年収の壁」に関連しては、令和6年10月に制度が変わったことを
厚生労働省が説明する社会保険適用拡大特設サイトが設けられています。 → リンク
また、関係資料も別に紹介されています。 → リンク
画像は、その中で「106万円の壁」について説明したものになります。

パートやアルバイトで働く人が、画像にあるように、
令和6年10月現在、次の条件にすべて該当する場合は、
勤務先の社会保険(健康保険・厚生年金)に加入する義務が生じます。
・ 勤務先の従業員の人数が51人以上(令和6年9月までは101人以上でした)
・ 2カ月を超えて勤く見込みがある
・ 学生ではない
・ 週の所定労働時間が20時間以上(残業時間は含みません)
・ 月額賃金が8万8千円以上 ↓
最後の条件を年額で計算すると、1,056,000円となるので、
ざっくり「106万円の壁」と言われています。
つまり、大企業やある程度の規模の中小企業にパートで月88,000円以上で働くと、
結婚相手の扶養から外れる替わりに、勤務先の社会保険に加入して、
保険料が給料から天引き(徴収)されることになります。
ここで言う賃金は、過去の実績ではなく、現在の勤務状況によります。
また、基本給及び諸手当が対象であり、
通勤手当や交通費、賞与や残業代などを含めない金額で判定します。
保険料は、勤務先がどの保険に所属するかによって仕組みが異なりますが、
全国の大抵の中小企業が所属する「協会けんぽ」(全国健康保険協会)なら、
給料の金額に応じて細かく段階的に増加し、労使が折半で負担します。
健康保険の保険料は、都道府県や年度によって変動し、
令和6年度の京都府では、標準報酬月額及び標準賞与額の10.13%
(介護保険料率 1.60%を除いた数字)です。
厚生年金の保険料は、標準報酬月額及び標準賞与額の18.3%です。
なお、労働時間が正社員の4分の3以上ある人の場合、
正社員と同じように、社会保険に加入する義務があります。
さて、上で紹介した条件に当てはまらないパートやアルバイトの人、
例えば、従業員数50人以下の中小企業にパートで働く人は、
勤務先の社会保険に加入しないで済みます。
しかし、年収が130万円以上になると、国民健康保険及び国民年金に対して、
保険料を支払う必要が出てきます。これが「130万円の壁」になります。
これは、会社員や公務員などの結婚相手の扶養から外れるからであり、
よくある「協会けんぽ」では、扶養を受けていると認められるためには、
次の両方の条件を満たす必要があります。
・ 本人(被扶養者)の年間収入が130万円未満
・ 本人の年間収入が結婚相手の年間収入の半分未満
* 半分以上でも、結婚相手の年間収入を上回らない場合は、
結婚相手が世帯の生計維持の中心的役割を果たしていると認められるとき
結婚相手と世帯が異なる場合は、本人の収入が仕送りを受ける金額未満
ここまでに述べた年収は、過去の収入ではなく、今後の年間の見込み額を指します。
また、通勤手当や交通費、賞与や残業代が含まれるのみならず、
雇用保険の失業給付、健康保険の傷病手当金や出産手当金、
各種年金や不動産収入といった継続的な他での収入も含まれます。
60歳以上の方や、障害厚生年金を受けられる程度の障害をお持ちの方の場合、
年間収入が180万円未満か以上かで判断されます。
以上の扶養に入れる条件は、勤務先がどの保険に所属するかによって、
異なる場合があります。どの時点の収入で判断するかにも、注意が必要です。
そのため、認定の条件が具体的にどのようになっているのか、
結婚相手の勤務先の扱いを確認する必要があります。
国民健康保険に加入するとなれば、市区町村によって、また年度によっても、
保険料の算定方法が異なるのですが、均等割といった固定部分と
所得割といった収入実績の金額に応じる部分に分かれています。
国民年金の保険料は、令和6年度現在、月16,980円です。
以上のことから、パートタイムの収入が増えても、
本人が負担する社会保険料が、その分よりも多くなってしまうため、
多く働くのを妨げるような「壁」が存在するのだと考えます。
上で紹介した厚生労働省の資料でも、この画像のとおり掲載されています。

そこで、政府が最近、制度改正や支援策を打ち出しました。
その内容は、別の機会にブログで取り上げる予定です。
なお、各種社会保険に関する個別の相談は、
所属する保険の担当部署または社会保険労務士にお願いします。