令和6年4月からは再婚していれば今の夫の子どもと推定
- 真本 就平
- 2024年4月17日
- 読了時間: 4分
今回のブログは、結婚や子どもに関する法律の改正を取り上げます。
相続と家族には密接な関係がありますので、参考になさってください。
この令和6年4月1日、生まれた子どもの父親が誰かを推定する
「嫡出推定」に関する規律に改正が加えられました。
また、女性の再婚禁止期間の規定も、同時に廃止されました。
今回取り上げる民法の改正は、令和4年12月に国会で成立しており、
法務省がホームページで紹介しています。 → リンク
画像は、その中の一部になります。

嫡出「ちゃくしゅつ」とは、婚姻関係にある男女(夫婦)から子どもが
生まれることを指します。この嫡出について、
民法には推定をかける規定がいくつか存在します。
まず、「妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。」
との定めがあります。夫婦の生活が円満ならば、いたって普通のことではあり、
夫婦間に生まれた子どもに対して法的な保護を与える表れだと言えます。
また、「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、
婚姻中に懐胎したものと推定する。」という規律もあります。
父母が離婚してからほどなく生まれた子どもに関して基準を定め、
父親が誰になるのかを明確にすることで、子の利益を確保する表れと言えそうです。
しかし、離婚直前期には、夫婦の関係が冷え切っていたことは、ままあります。
離婚後300日以内に子どもを出産した場合、
その子の血縁上の父親が前の夫と異なるときであっても、
前夫を父とする出生届でないと、原則として市区町村に受理されません。
これを避けるためには、後で述べるように前夫の協力が必要でしたが、
DV(家庭内暴力)があった事例などでは、連絡を取ること自体に困難が生じます。
こうして、母が子どもの出生届をできないまま、その子どもの戸籍が作成されない
問題が生じてしまい、嫡出推定制度が一因だと考えられています。
そこで、「女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、
当該婚姻における夫の子と推定する。」と明確に定められたことに加え、
「女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、
その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。」
との規定が新設されました。
これにより、離婚から300日以内に子どもが生まれた場合であっても、
その母親が前の夫とは別の男性と再婚をした後に生まれた子どもならば、
再婚後の夫の子と推定するようになりました。
また、これまではごくごく例外を除き、女性は男性と異なり、
離婚などで婚姻が終了した後、再婚が禁止される期間が定められていましたが、
令和6年4月1日にこの制限が撤廃され、女性もすぐに再婚できるようになりました。
再婚禁止期間が設けられていた理由は、嫡出推定規定と相まって、
子どもの父親を誰であるか判別できない事態を防ぐためでした。
平成28年までは、明治時代から変わらず、再婚禁止期間は6カ月でしたが、
最高裁判所の判決をきっかけに、民法が改正されて、
当時の嫡出推定規定に照らして必要と考えられる100日間に短縮されました。
さらに今回、嫡出推定規定が見直されたため、
禁止期間は合理的な意義を失ったことで、廃止になりました。
もっとも、再婚せずに子どもを出産した場合は、以上の改正の対象外です。
離婚から300日以内の出産ならば、前夫の子だと推定されます。
さて、ここまで取り上げてきた父親が誰かを定める規律は、
あくまで「推定」であり、絶対にくつがえせないものではありません。
その方法が「嫡出否認の訴え」で、家庭裁判所に申し立てるのですが、
夫(推定で父親にされた男性)のみが訴えを提起できた上、
子の出生を知った時から1年以内に提起する必要がありました。
子や母に推定を否認する手段が無かったため、
夫や前夫を説得して訴えを起こしてもらう場合はともかく、
拒否されたり、そもそも連絡を取りたくない場合も想定され、
それならば出生届を出さない選択が採られてしまい、
子が無戸籍になる問題の一因だと考えられています。
そこで、令和6年4月1日以降に生まれる子については、
夫に加え、子と母にも嫡出否認の訴えを提起することが認められました。
再婚後の夫の子と推定される子に関しては、前夫が訴えることもできます。
また、訴えを起こせる期間が3年間に延長されました。
さらに、令和6年3月以前に生まれた子であっても、
1年間に限り(つまり令和7年3月までならば)、
子や母が嫡出否認の訴えを起こすことが可能です。
嫡出否認の訴えを個別具体的に検討される方は、
弁護士へのご相談ご依頼をお願いいたします。