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公正証書遺言の作成で公証人が出張 ~署名を代行することも~

 病気やけがのため、身体が不自由な状態の方でも、人によっては、だからこそ、

遺言を残して、自分が亡くなったときに財産の引継ぎ先を決めておこうと、

それも確実性が高い公正証書遺言を使うことを希望することが考えられます。

 遺言を作ろうとする本人が公証役場へ行くことができれば良いのですが、

自宅や介護施設、病院から外出しづらい場合は、どうすればよいでしょうか。

 

 公証役場に行けないときでも、手間と費用は掛かりますが、

遺言作成者が希望する場所公証人出張する仕組みがあります。


 もちろん通常は、公証役場で公証人に会って、公正証書を作成することになります。

 しかし、本人の意思を重視する度合いが強い公正証書遺言の場合、

本人が公証役場に来られない事態を考慮して、

公証役場で作成することは、必須にはなっていません。

 そのため、これから説明することに注意すれば、

遺言作成者の希望に応じて、公証人に出張してもらうことができます。


 注意点の1つ目としては、公証人が出張できる範囲が限定されることです。

 公証人は、自己が所属する法務局・地方法務局の管轄外で職務を行うことが

できません。公証人の所属は、都道府県単位であるため、

公証人が出張できるのは、同一の都道府県の範囲内になります。

 そのため、住所が京都市にあっても、入院先の病院が大阪府内にあると、

病院へ出張で来てもらえるのは、京都府内の公証役場に所属する公証人ではなく、

大阪府内の公証役場に所属する公証人となります。

 自ら公証役場へ行って作成する場合は、全国どこの公証役場でも対応してくれますが、

公証人が都道府県を超えて出張することはできません。


 2つ目の注意点は、公証人に支払う手数料が、通常よりも増えることです。

 まず、公正証書遺言の手数料は、いくつかの種類を合計した額になります。

 その中心となるのは「遺言手数料」で、財産の価値や遺言の内容によって変動し、

1万円前後で済むこともあれば、数十万円を超えることもあります。

(今回のブログでは、この詳細や算出方法を紹介いたしません。)

 また、遺言に記載する財産額の合計が1億円以下の場合には、

「遺言加算」として1万1千円が追加されます。

 そして、原本・正本・謄本の「用紙代」も必要になり、

遺言書の枚数が多いと増額しますが、数千円程度となることが多いでしょう。


 ここまでが公証役場で作成する場合に必要な手数料ですが、

出張の場合には、次に挙げる手数料が追加されます。

 まず、「病床執務加算」として、「遺言手数料」の50%を支払うことになります。

 加えて、公証人の「日当」が必要になり、4時間までなら1万円ですが、

これを超えると1日分の2万円になります。

 さらに、公証役場から現地までの往復の「交通費」も必要で、

実費として、基本的に電車やバスなどの公共交通機関の運賃が求められます。


 仮に「遺言手数料」が4万円で、出張が4時間以内で済む場合、

公証人へ支払う手数料は、次のようになるでしょう。

        公証役場で    出張

「遺言手数料」  40,000円   40,000円

「病床執務加算」   ×     20,000円

「遺言加算」   11,000円   11,000円

「日当」       ×     10,000円

「交通費」      ×     往復実費

「用紙代」     数千円    数千円

 合計     5万数千円  8万数千円


 実際に公正証書遺言を作成するに当たっては、遺言者と公証人が事前に打合せをして、

必要書類も前もって公証人が受け取り、予め遺言の文面を用意しておくのが通常です。

 そのため、公証役場を何回か訪問したり、書類やメールをやり取りすることが

必要になりますが、遺言者自身ではなく、子どもなどの親族や行政書士などの専門家が

事前調整を代わりに行うことはよくあります。

 身体が不自由な方が遺言を残す場合、事前調整を自分で行うのは大変でしょうから、

親族専門家事前調整を任せる必要性は高いと考えます。


 また、公証人が出張するに当たっては、きちんと日程調整する必要があります。

 遺言者本人と公証人に加え、その場に証人2人いる必要がありますので、

合計4人が一堂に会することができる日時を設定する必要があります。

 病院や施設に集まる場合、内部の部屋を利用するに当たり、

特にコロナ禍以降、外部の人間が入ってくるのを厳しく制限するところもあるため、

施設側の規則や意向にも、合わさなければなりません。

 さらに、公証役場に1人しか公証人がいない場合だと、公証人が出張中は、

公証役場で業務ができなくなるため、時間帯が制限されてしまうこともあります。


 出張の当日は、公証人が印刷した遺言書を用意した上で、関係者が集まります。

公証人は打合せの内容に沿って、遺言者に質問をしながら、その意思を確認して、

証人2人がその様子を見届けます。そして、遺言者と証人2人が公正証書遺言の原本に

署名と押印を行った後、遺言者が正本と謄本を受け取り、手数料を支払います。

 こうした段取り自体は、公証役場で実施する場合と変わりはありませんが、

急な変更が生じた場合に、出張場所では対応ができないことも起こりえます。

 また、公証人のみ出張で来て、手数料を受け取ることになるので、

お釣りはなるべく無いように手渡すことが望まれます。



 さて、遺言を作成しようとする人が、話や受け答えができても、

手を動かすのが不自由なため、文章を書くだけでなく、署名さえできない場合、

公正証書遺言に必要な遺言者の署名は、どうなってしまうのでしょうか。


 例外的な対応ではありますが、公証人が遺言に説明記載した上で、

公証人が遺言者の名前を代わりに書く仕組みがあります。

 「病気のため」などの理由を含め、遺言者が署名をできないことが

公正証書遺言に記され、その部分に公証人が職印を押します。

そして、公証人が遺言者の氏名を代署して、

遺言者にその横に自分のはんこを押してもらうことが行われています。

 さらに、遺言者が押印をすることもできないときは、遺言者の意思に従って、

公証人が遺言者の目の前で、遺言者に代わって押印することもできます。


 そもそも、遺言を作成するに当たっては、遺言者が遺言に関する判断ができて、

遺言者本人の意思のとおりの内容になっていなければなりません。

 そのため、公正証書遺言では、公証人が遺言者本人に会って、様子を観察したり、

質問への応答を聞くことを通して、遺言者の判断力や意思を点検しています。

こうした点に問題があると判断すれば、遺言の作成を断ることもあります。

 このこと自体は、遺言者が公証役場を訪問する場合でも、同じです。

親族や専門家に打合せを任せていた場合は、遺言書の作成日に公証人が初めて

遺言者に会うことになるため、その場で遺言者の判断力や意思を慎重に見極めます。


 身体が不自由な状態の方、手書きができないの方が遺言を残す場合、

その人に判断力や遺言書どおりの意思があったのか、疑われることも起こります。

しかも、その方が亡くなられた後に、遺言書が有効かどうか争いになると、

もはや本人に確かめることはできないため、争いが激しくなることもあります。

 公正証書遺言は、自筆で作成した遺言に比べて、

作成段階で第三者の専門家である公証人が関与して、

遺言者本人の判断力や意思に問題がないと認めてから、作成がなされます。

 そのため、公正証書遺言が残されていた場合、こうした問題が争われても、

反論ができるので、遺言を残す側としても安心できることでしょう。


 身体が不自由な状態の方など、自力で活動することが難しい人こそ、

公証人の出張などの仕組みを積極的に活用して、

公正証書遺言を利用する意味合いは高いと考えます。


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