子や結婚相手に遺留分がある ~遺言や生前贈与に反発できる最低保障~
- 真本 就平
- 2月13日
- 読了時間: 5分
長年の間、連れ添ってきた夫婦が財産を築き上げるに当たって、
不動産や預貯金といった財産の名義が、
外で稼ぎを得ていた夫のものになっていることは、よくあるのでしょう。
その夫が亡くなった後、遺言により全く別の女性に全財産を譲ることになって、
妻が一切受け取れないとなれば、裏切られた気持ちになってしまいます。
また、兄弟姉妹が全員親元を離れて、仕事や暮らしを別々に営んでいる場合に、
親が特定の子だけに、その全財産を贈与した後に亡くなったとしたら、
他の子としては、何も受け取れないままでは、不公平を感じてしまうものでしょう。
このようなときでも、一定の相続人に対して、
亡くなった人の財産から一定の取り分を確保できるよう、民法が保障しています。
この取り分を「遺留分」(いりゅうぶん)と呼びます。
遺留分の制度の意義は、亡くなった人の財産を処分する自由を保障しつつ、
近親者である相続人の生活保障や財産形成への協力の評価など、
遺産に対する一定の期待を保護することにあります。
遺言や生前贈与が不合理で不当な場合に、法定相続人の権利を守り、
共同相続人間の公平を保つ役割を果たすのだと言えます。
この遺留分が保障されているのは、相続人全員ではなく、
結婚相手、子や孫などの直系卑属、親などの直系尊属に限られます。
兄弟姉妹や甥姪は相続人にはなれるのですが、
生活保障や財産形成の必然性は薄いと考えられるため、遺留分はありません。
孫などが相続人になるのは、子(孫にとっては親)が先に亡くなるなど
「代襲相続」が生じるときですが、子と同じ遺留分を持つことになります。
そして、亡くなった方の財産に一定の割合を掛け算して遺留分を算出するのですが、
この割合は、まず遺留分権利者全員でどれだけになるかが民法に定められています。
これを「総体的遺留分」と呼びます。
たいていの場合、この割合は2分の1と定まっているので、
遺留分は相続分の半分になるというのが当てはまりはするのですが、
父母もしくは祖父母など直系尊属だけが相続人の場合に限り、3分の1になります。
相続人が1人の場合、この総体的遺留分がそのまま自らの遺留分になるのですが、
相続人が複数いる場合、総体的遺留分にそれぞれの法定相続分を掛け算して、
各自の遺留分である「個別的遺留分」を算出します。
そのため、子が複数いるときは、それぞれ均等に権利を有することになります。
下の画像でいくつか例示しておきます。
イ 相続人が妻と息子と娘の場合
妻 :総体的遺留分1/2 × 各自の相続分1/2 = 個別的遺留分1/4
息子と娘:総体的遺留分1/2 × 各自の相続分1/4 = 個別的遺留分1/8
ロ 相続人が両親の場合
父も母も:総体的遺留分1/3 × 各自の相続分1/2 = 個別的遺留分1/6
ハ 相続人が妻と弟の場合
兄弟姉妹や甥姪には遺留分がないため、
結婚相手が総体的遺留分2分の1を個別的遺留分として独占することになります。
実は民法の条文を読むと悩ましいのですが、このように解釈されています。

では、遺留分を算定する基礎となる財産は、どう求めるのでしょうか。
これも決まりがあって、亡くなった方が亡くなったときの遺産総額そのままではなく、
次に説明する贈与の金額を加えて、債務の全額を引き算して、調整をかけます。
上の画像の下部分も参考にご覧ください。
相続人以外への贈与については、亡くなったときから遡って1年間に限られます。
相続人に対する贈与では、亡くなったときから遡って10年の間に、
婚姻や養子縁組のため、または、生計の資本として受けた場合に限定されます。
ただし、どちらの場合も、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って
贈与をしたときは、1年や10年の期間限定が適用されず、昔の贈与も加えられます。
この「損害を加えることを知って」とは、贈与で遺留分に食い込む認識があればよく、
具体的に遺留分権者が誰かを知っている必要はありません。
しかし、将来に贈与者が亡くなるときまでに財産状況がそのまま、
または増加しないことを予想していたことが必要です。
このような調整は、遺産を相続人の間で分割するに当たり、各相続人の
具体的相続分を算出する上で、算出の基礎となる財産を求めるときにも行われます。
ただし、相続人以外の贈与を加算したり、債務を控除する点は、
具体的相続分では行われず、遺留分算定において実施されており、
逆に「寄与分」を控除することは、遺留分算定では設けられていません。
また、具体的相続分算定における「特別受益」とは、
婚姻や養子縁組なり生計の資本のための贈与に限定する点は共通していますが、
過去に遡る期間について、特別受益が無制限なのに対し、遺留分では10年までです。
なお、不動産や有価証券を始めとした財産の価値は、生前贈与であっても、
相続開始時=亡くなった時点の価値によって算出します。
このように算出した基礎財産に、先ほどの「個別的遺留分」を掛け算して、
各自が権利を持つ金額がいくらになるかが計算できます。
この遺留分の権利をどのように行使するかは、次回のブログで伝えようと思います。
したがって、生前に贈与をしたり、遺言を作成したからと言って、
自分の財産の分配が確定するのではなく、相続人が持つ遺留分によって、
自分の死後に財産の分配に修正が加わることを意識すべきだと考えます。