欠格や廃除で相続人から外れる ~遺言関係以外は認められにくい~
- 真本 就平
- 1月31日
- 読了時間: 4分
相続人が誰であるかは、民法に定めがあり、勝手に変えるわけにはいきません。
とは言え、実は生前、亡くなった人に対して虐待を加えるなど、
行いが相当悪かった相続人が存在することも、世の中には起こります。
そのような人でも、相続人として遺産を受け取る権利があるとなれば、
他の相続人が亡くなった人の想いを巡らせるとき、釈然としない気持ちもわかります。
そこで、民法では、行いが相当悪かった相続人がもはや相続人でなくなる
「欠格」と「廃除」の制度が用意されています。
しかし、亡くなった人の遺言を破棄したり隠した場合など以外は、
成立する要件は厳しく、簡単に認定されるものではありません。
しかも、「廃除」が認められるには、家庭裁判所の手続きが必要になります。
まず、「欠格」については、次のどれかに該当する人は、
それだけで相続人となることができなくなります。
1 故意に故人または先順位・同順位の相続人を死亡するに至らせ、
または至らせようとしたために、刑に処せられた人
2 故人が殺害されたことを知っていながら、告発・告訴しなかった人
※ ただし、その人に是非の識別ができないときや、
殺害者が自己の配偶者・直系血族であったときを除く。
3 詐欺または強迫によって、故人の相続に関する遺言の
作成・撤回・取消し・変更を妨げた人
4 詐欺または強迫によって、故人に相続に関する遺言の
作成・撤回・取消し・変更をさせた人
5 相続に関する故人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した人
このうち、1つ目については、殺人罪などで刑事裁判が確定して、
刑罰が執行される必要があることにご注意ください。
また、3つ目から5つ目までは、遺言に関わるもので、
刑事事件の進展とは関わらず、事実が存在することで該当します。
そのため、5つ目は比較的起こりえると考えられそうですが、
相続人の地位を奪うという重大な影響があることを考慮して、
相続に関して不当な利益を目的に破棄や隠匿などをした場合、
例えば、他の相続人から遺留分の請求を受けることを恐れて、
遺言書の存在を隠していたような場合に限られます。
一方、「廃除」の場合、将来に自分の相続人になる人が、
次のどれかに該当すると、その人を相続人から外すよう、
自分の意思に基づいて、家庭裁判所に求めることができる制度です。
1 自分に対して虐待をしたか、重大な侮辱を加えたとき
2 その他の著しい非行があったとき
こちらの場合も、単に非行の事実があると主張するだけでは廃除が認められず、
客観的に非行の程度が著しいと判断される場合に限られています。
例えば、精神的苦痛を与えたり名誉を棄損することによって、当事者間の
家族的協同生活関係が破壊され、その修復が著しく困難な場合が挙げられます。
逆に、非行を受けた原因が自分にもあるような場合や非行が一時的な場合には、
廃除が否定される傾向にあります。
また、廃除の対象となるのは、配偶者、子や孫、親や祖父母など
遺留分の権利を有することになる相続人に限られます。
なぜなら、自分自身が遺言を作成し、その遺言の内容が、
問題のある兄弟姉妹や甥姪に遺産を渡さないものにすれば、済むからです。
「廃除」の手続きについては、必要な書類をそろえて、家庭裁判所に申し立てた後、
「審判」によって裁判所が認めるかどうかを決定します。
遺言によって特定の相続人の廃除を求めることも可能です。
この場合、死後に遺言執行者が家庭裁判所に申し立てる必要があります。
「欠格」も「廃除」も、効果はともに、
該当する特定の故人との関係において、相続を受ける資格を失います。
これにより、遺言や生前贈与でも奪うことができない最低保障である
遺留分の権利も失います。
亡くなった後に確定した場合でも、亡くなった時点に遡って、効果が生じます。
もっとも、欠格や廃除になった相続人に子がいる場合、
その子が相続する資格を引き継ぐ「代襲相続」が起こります。
そのため、相続人である子が欠格や廃除になっても、孫が相続人になります。
自分自身の判断で行う相続の放棄とは異なる点になります。
「廃除」の場合、審判や調停の後に、申し立てた人が市区町村に届け出ることで、
対象となる相続人が廃除されたことが戸籍に掲載されます。
そのため、相続手続きにおいて戸籍を収集すると、
廃除の事実がわかるようになっており、この点は欠格と異なります。
このように、相続人から外されるという重大な影響があるため、
遺言関係が原因の欠格であっても、事実の有無、目的や事情などを巡って、
相続人の間で主張が対立し、争いが激しくなることが起こりえます。
そのため、証拠を集めて整理をしておくことが重要になり、
欠格に該当する相続人に対して内容証明郵便を送る必要が生じることもあります。
廃除でも、家庭裁判所に対して事実や事情や説明するに当たって、
証拠を提示して、納得してもらうことが求められます。
なお、実際に廃除の申立てを依頼される場合は、弁護士にお願いします。