特別受益と寄与分の主張は10年間に限定 ~令和10年4月以降~
- 真本 就平
- 2024年9月26日
- 読了時間: 5分
親など身内の方が亡くなった後、その遺産をどのように分けるかについて、
遺言を残していなければ、相続人同士が話し合いで決めることになりますが、
それぞれの意見や事実認識がぶつかり、なかなかまとまらないこともあります。
その原因に「特別受益」や「寄与分」が関係することもあります。
しかし、近い将来、この特別受益と寄与分を基に遺産分割をしようとしても、
故人が亡くなってから10年を経過すると、権利として認められなくなります。
特別受益と寄与分については、このブログで最近、記事に挙げましたので、
以下のおおまかな説明で物足りないと思われる方は、そちらを参考にしてください。
相続人が複数いるとき、民法では遺産の配分割合を定めています。
この割合が法定相続分と呼ばれ、その内容はよく知られています。
また、遺言で相続人間の配分割合を決めることができ、指定相続分と言われます。
こうした法定相続分や指定相続分は、遺産分割の基準としては明確ですが、
相続人と遺産に関わる個別事情を反映しているわけではありません。
そこで、法定相続分や指定相続分を事案ごとに修正して算出することが認められ、
そのときに使われる割合が具体的相続分と呼ばれます。
具体的相続分の算出に当たっては、特別受益と寄与分が反映されます。
特別受益は、亡くなった人から婚姻または養子縁組のため、もしくは
生計の資本として受けていた生前贈与に加え、相続人が受けた遺贈が該当します。
寄与分は、亡くなった人の財産の維持や増加のため、生前に相続人が
通常の程度を超えるほどの特別な貢献をしたことが該当します。
どちらも、相続人間の公平を目指すために設けられた制度なのですが、
実際の遺産分割の場面では、過去の事実の存否、金額や財産評価、法解釈など、
相続人の間で主張が異なり、相続争いの原因になることがままあります。
そんな中、近年、相続登記がなされずに放置されることなどから、
不動産登記簿からは直ちに所有者が判明しない土地が増えてしまい、
社会に悪い影響を及ぼす「所有者不明土地」の問題が注目されるようになりました。
そこで、特別受益と寄与分を主張できる期間を制限することが決まりました。
法律の改正自体は、様々な所有者不明土地問題対策の制度とともに、
すでに令和3年に成立しました。
このことを法務省がホームページの中で紹介しています。 → リンク
画像は、その中から特別受益と寄与分について、抜粋したものになります。

例えば、相続登記の申請義務化ですと、
所有者不明土地問題の解消を目指すとの説明は、わかりやすいのですが、
特別受益と寄与分の期間制限が、どう所有者不明土地問題に役立つのでしょうか。
相続が起こって争いが長引いた場合、またはあえて協議せず放置していた場合、
通常でも争いの原因になってしまう特別受益や寄与分について、
証拠がもはや見当たらなかったり、本人の記憶でさえ曖昧になりえます。
さらに、孫やひ孫の世代が放置状態の権利関係を整理しようとしても、
相続が何度も繰り返されて、相続の権利がある人があまりに多数にのぼると、
そのうち1人でも反対したり、重い認知症や行方不明になると、
遺産分割協議はできなくなり、相続登記も受け付けてもらえません。
ましてや、特別受益や寄与分に関する主張をする人がいると、
まとまる協議も、まとまらない状態に陥ります。
かと言って、当人にとって価値が低い土地に対して、
家庭裁判所が関与する手続き(調停や審判)に進む気持ちにはならないでしょう。
このようにして、相続の権利がある人の共有状態の解消が困難になり、
土地の所有者が外部からわからず、当人さえ認識を失うことにもなります。
そこで、一定の期間が経過すれば、
相続割合が画一的に決まる法定相続分や指定相続分に従い、
簡明に遺産分割を行うことが決まりました。
そのため、昔の相続に係る遺産分割は、早く成立できる期待が持てます。
また、生前贈与を受けていない相続人や寄与分を主張できる相続人にとっては、
期間内に対応を迫られ、遺産分割を早く進める動機づけにもなります。
このようにして、遺産分割が長期間できていない状態の解消を進めることで、
所有者不明土地の発生を予防することを目指すと説明されています。
その一定期間は、相続が起こってから(=故人が亡くなってから)
10年間に定められました。
もっとも、10年を経過する前に相続人が家庭裁判所に
遺産分割請求をしたときや、やむを得ない事情がある場合は、
分割成立までに10年以上かかっても、特別受益や寄与分が認められます。
また、特別受益や寄与分が一切否定されるわけではありません。
そもそも、遺産分割を相続人間の協議で決める場合、
遺産や各相続人の状況など一切の事情を考慮できるため、全員が合意すれば、
必ずしも法定相続分や指定相続分どおりの分配にならなくても構いません。
ですので、10年を超えても、相続人全員が特別受益や寄与分を考慮した
分割に合意すれば、こうした分割を実施することも可能です。
10年を超えると、家庭裁判所に主張しても、採用してくれないわけです。
以上のとおり紹介した新しい仕組みですが、猶予期間が設けられています。
実施は令和10年4月1日以降であり、
このとき以降に、相続が起こってから10年を経過していれば、
特別受益と寄与分の主張制限が適用されることになります。