相続放棄には正式なものと形だけのもの?!
- 真本 就平
- 2024年1月23日
- 読了時間: 2分
親または結婚相手が亡くなった後、悲しみが癒える頃には、
相続人として遺産を受け継ぐことを考え始めることになります。
そのとき、様々な事情や理由をお持ちのため、自分は遺産を一切受け取らずに、
他の相続人に継いでもらえればよいと考えること場合もあるでしょう。
このときにどんな手続きを取るか、効果がどうなるのかについて、
当事者や関係者の方には、十分に注意してもらいたいと思います。
自分が遺産を受け取らないようにするには、相続人の立場を失い、
亡くなった方の権利や義務を一切受け継がない状態にすることが考えられます。
それには、家庭裁判所へ「申述」する手続きが必要になります。
この手続きを仮に正式な相続放棄と呼んでみます。
その手続きは、亡くなった方の住所を管轄する家庭裁判所に、
相続を知ってから原則3カ月以内に申述書を提出することでできます。
(画像のとおり裁判所がホームページで説明をしています。)
もし3カ月以内に相続財産の状況を調べきれず、放棄すべきか判断できない場合には、
家庭裁判所に申し立てることで、放棄の期間を延長することができます。
なお、このような手続きを業務で代理できるのは、司法書士と弁護士になります。

一方、家庭裁判所の手続きを経なくても、
自分は財産を全く受け取らない効果を生じさせることはできます。
相続人の間で遺産をどう分配するか決定する遺産分割協議において、
自分ではなく他の相続人が遺産を受け取り、その内容を記載した遺産分割協議書に、
自分を含めた相続人全員の署名と押印をすることです。
これをここでは形式的な相続放棄と呼んでみます。
こうして、あたかも相続を放棄したような状態になります。
しかし、相続人としての立場は引き続き存在するので、
正式な相続放棄とは、次のような場面で大きな違いが生じます。
正式な相続放棄をした相続人は、相続人でなくなるため、
亡くなった人の債務を引き継ぐことはありません。
しかし、形式的な相続放棄では、全く遺産を受け取らなくても、
亡くなった人の債務を引き継ぐ立場に変わりなく、
他の相続人とともに義務を果たさなければなりません。
また、子どもが全員、正式な相続放棄をすると、
兄弟姉妹や甥姪に相続の権利が生じることも起きます。
形式的な相続放棄では、相続人が変更することはありません。
一方、相続の事情を知ってから3カ月経って、家庭裁判所に何も手続きをしないと、
正式な相続放棄はできなくなりますが、形式的な相続放棄なら可能です。