相続放棄をしたがために、思いがけない人が相続人になることも
- 真本 就平
- 2024年8月27日
- 読了時間: 3分
夫婦がともに長年暮らした後、夫が亡くなってしまったとき、
夫名義の財産を妻の協力なしには築き上げられなかったとしても、
相続手続きを避けるわけにはいきません。
そんなとき、息子や娘は亡くなった父親からの財産を引き継がずに、
妻(子にとっては母親)がすべての遺産を相続することを希望する、
というようなご家族もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この希望を実現させようと、子が全員、相続放棄をしたことで、
予想もしていなかった人が相続人になってしまい、
その後の相続手続きが大変になることが起こり得ます。
なお、ここで言う相続放棄は、家庭裁判所に対して手続きをする正式なもので、
原則、相続を知ったときから3カ月以内に「申述」が必要になります。
下の画像では、相続人は妻と息子と娘の3人であり、
このうち子2人が正式な相続放棄をすると、民法の規定により、
初めから相続人とならなかったものとみなされます。
これにより、相続放棄をした人は、相続財産を受け継ぐ権利も
相続債務を負担する義務も、相続開始当初に遡って生じないことになります。
これだけでなく、子2人が「初めから相続人とならなかった」ため、
相続について故人に子がいなかったのと同じ状態になり、
民法の規定により、第2順位とされる親が相続人になってしまいます。
親がいなければ、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります。
下の画像では、親は先に亡くなっていますが、
姉と弟 及び 甥と姪(兄弟姉妹の代襲相続による)が新たに相続人になり、
もとから相続人である妻と合わせて、5人が相続人になる状態が生じます。

こうなると、故人の財産の相続手続きを進めるには、
5人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
誰か1人でも合意しなければ、裁判所による解決も検討することになります。
故人の姉たち全員を説得して、正式な相続放棄をしてもらうにしても、
それぞれ自分が故人の相続人になることを知ったとき、
つまり、子2人ともが相続放棄をしたことを知ってから、
原則は3カ月以内に、家庭裁判所へ申述の手続きをする必要があります。
もし初めに述べた希望に従った相続手続きをしたいのならば、
当初の相続人3人で遺産分割協議を行い、
そこで、妻だけが相続財産を引き継ぐことを決めるのが良いです。
ただし、借入金などの相続債務は、法定相続分と異なる負担を決めても、
債権者の了承が必要になることは、お気を付けください。
ここで話を変えて、上の画像で妻と息子が相続放棄をした場合を考えます。
この場合、「初めから相続人」になるのは娘だけなので、
遺産を(相続債務も)引き継ぐのは娘だけになる効果が生まれます。
このほか、相続財産より相続債務が多いことがわかっているため、
相続人全員が相続放棄することもあります。
すると、相続人が第2順位以降に移ることから、
親や兄弟姉妹らが思いがけずに相続債務を負担する事態が生じます。
上の画像では、妻・息子・娘の3人ともが相続放棄を家庭裁判所に申述すると、
姉・弟・甥・姪の4人が相続人となって、相続債務を負担することになります。
この4人が相続債務の負担を逃れるには、この4人も相続放棄をするべきです。
息子と娘の2人が相続放棄をしたことを知ってから、
原則は3カ月以内に、家庭裁判所へ申述しなければなりません。
もともとの相続人にとって、新しい相続人からのトラブルを避けるため、
自分たちが相続放棄をしたことや相続債務が多い事実を伝え、
証拠書類を示すとともに、相続放棄を促すことが望ましいです。