自筆の遺言でも、財産目録は印刷なども可能
- 真本 就平
- 2024年6月4日
- 読了時間: 3分
自分が亡くなった後に財産をどのように受け継がせるかを決められる遺言。
費用面などを考えて、公正証書を利用せずに、自筆で残すことを決心し、
いざ書き進めてみると、自分の財産を挙げるだけで疲れてしまった。
というような話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、令和の現在では、自筆の遺言を書く場合に、
財産目録の部分は手書きしなくて済むよう、負担が軽くなっています。
このことは、法務省がホームページで紹介しています。 → リンク
画像は、その中で掲載されているものです。

この切替えは、平成31年(西暦2019年)1月13日に実行され、
同じ年の5月1日に令和が始まりました。
同年1月13日よりも前に作られた自筆の遺言については、
同日以後に亡くなっても、文字どおり全文を自書していた必要があります。
現在は例外的に、自筆の遺言に相続財産の全部または一部の目録を
添付するときは、その目録については手書きしなくても構いません。
この財産目録は、どのような財産があるかをまとめたリストはもちろん、
個別の財産を単純に特定する内容であることも認められます。
また、書式は自由であり、遺言者本人がパソコンなどで作成したものを
印刷してもよく、ほかの人が作成した書面を使うこともできます。
ほかにも、不動産について登記簿謄本(登記事項証明書)を添付することや、
預貯金について通帳のコピーを添付することもできます。
しかし、遺言として有効と認められるには、財産目録の全部のページに
遺言者が署名と押印をしなければなりません。
記載が両面にある場合は、両面とも署名と押印が必要です。
遺言の本文で使った印鑑とは異なる印鑑を使っても構わないのですが、
財産目録が複数ページにまたがるときは、必ずすべてに押印してください。
自筆の遺言の場合、本人の意思が表れていると考える重要な根拠として、
本人が自筆で記載したことが求められることを踏まえ、
財産目録の部分なら、自筆の代わりに本人の署名と押印を求めることで、
遺言が偽造されるようなことを防ぐ目的があるのだと思われます。
自筆の遺言に財産目録を添付する方法については、特に決まりはありませんが、
本文と財産目録をステープラーなどでとじて(ホチキス止めとも言います)、
契印をすることを、遺言書の一体性を明らかにする観点からは、お勧めします。
もっとも、自筆の遺言を法務局で保管してもらう場合は、
むしろホチキス止めや契印は不要になります。
なお、こうした取扱いは、財産目録を「添付」する場合に認められるため、
手書きでない財産目録は、遺言本文とは別の用紙で作られる必要があり、
本文と同じ用紙に盛り込むことはできません。
では、財産目録を添付する遺言は、どのような内容になるのでしょうか。
これまた、特に決まりはありませんが、例えば、本文の手書きで、
「別紙目録第1記載の財産を、遺言者の長男だれだれ(生年月日)に相続させる。」
「別紙目録第2記載の財産を、だれだれ(住所・生年月日)に遺贈する。」
別紙の目録では、各種財産を第1と第2で分けて記載することになるでしょう。
そのほか、財産目録に明記されていない財産について、記載漏れの場合も含め、
どのように扱うのか配慮した遺言の内容にすることが望ましいです。
また、自筆の遺言は、遺言者単独で作成できることが利点の一つですが、
形式上の不備で無効になったり、内容が不明確なためにトラブルが生じる
可能性があることには、十分にご注意ください。