自筆の遺言を法務局に預けて、確実に伝わるように
- 真本 就平
- 2024年1月30日
- 読了時間: 3分
自分が亡くなった後に財産を思いどおりに受け継いでもらうために、
遺言を作成するのが、「終活」の1つと言われてきています。
その際に色々な事情のため、公正証書を利用するのではなく、
自筆で書いた「自筆証書遺言」を残すこともあるでしょう。
以前はこうした遺言を、自宅で大切に保管するか、
家族や自ら依頼した専門家に預けるなど、管理は自己責任でした。
しかし、令和2年7月10日以降は、国の組織である法務局に
自筆の遺言を保管してもらう制度が利用できるようになりました。
この自筆証書遺言書保管制度を法務省がホームページで紹介しており、
画像はその一部分となります。

まずは、遺言者ご自身で自筆の遺言を作成します。
署名と押印が必須ですが、現在は財産目録の部分は、自筆でなくても構いません。
次に、保管を受け付ける法務局に対して予約をして、
所定の様式による申請書に必要な事項を記入するとともに、
住民票など添付書類を用意します。
予約日時に遺言者が法務局を訪問して、遺言書などを提出し、
形式的な審査を受けて、保管してもらえます。
法務局に支払う手数料は、令和6年1月現在、3,900円になります。
この保管制度により、自筆の遺言の欠点(デメリット)が解消できると考えます。
重要なのは、遺言書を誤って捨ててしまったり、置いた場所を忘れるなど、
紛失する事態が起こらなくなることです。
遺言書の原本が法務局で保管されているためであり、
遺言者の死後は、相続人も法務局に対して確認ができます。
また、別人によって遺言書が偽造されたり、勝手に書き換えられることや、
わざと隠されることを防ぐこともできます。
このことに加え、遺言者が保管の手続きの際に希望すれば、
法務局が遺言者の死亡の事実を確認できたときに、
予め指定しておいた人に対して、通知を届けるようにすることも可能です。
そのほか、保管されていない自筆の遺言の場合、遺言者が亡くなった後、
家庭裁判所に遺言書を提示する「検認」の手続きが必要になりますが、
法務局に保管しておけば、検認を受ける必要はなく、
相続人などが法務局に対して証明書を請求する手続きで済みます。
(検認やこうした証明書については、別の記事で説明したいと思います。)
ただし、自筆の遺言なら何でも保管できるわけではありません。
用紙はA4サイズに指定されており、片面のみ使うことが求められ、
周りに余白を確保します。(左に20mm、下に10mm、上と右は5mm)
各ページに通し番号でページ数を記載することも必要な上、
遺言書が複数枚にわたる場合でも、ホチキス止めや契印は不要です。
また、遺言者本人が法務局に必ず出向かなければなりません。
代理人を立てて代わりに法務局に行ってもらうことは認められません。
かと言って、保管制度では、法務局が遺言の内容を点検しません。
公証人が責任を持って作成する公正証書遺言とは、やはり異なります。
もちろん、法務局での保管が都合が悪い場合や、利用できない場合、
従来どおり、自ら遺言を保管することもできます。