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贈与は契約書を作るのが良いの?

 財産を別の人にただで与えて、その人のものにしてしまうのが贈与。

 財産を多くお持ちのご高齢の方が、子どもなどに贈与して、

相続対策として実施することもあるでしょう。


 そのとき、贈与契約書を作成して残しておくのが良いと言われますが、

その意味合いはいくつかありますので、以下のとおり紹介してみます。


・解除を防ぐ


 人と人とが法律的に意味のある取り決めをする契約は、

原則的に当事者の合意で成立するので、書面なしの口約束だけでも、

契約の内容に従った権利と義務が発生します。


 しかし、書面によらない贈与は、履行が終わっていない部分について、

いつでも解除することができます。つまり、贈与の口約束をしても、

財産を引き渡していなければ、あとで無かったことにできるのです。

 このことは、民法第550条に規定されています。


 なお、令和2年3月までは「解除」でなく「撤回」と定められていましたが、

当事者の一方的な意思表示によって契約の効力を当初に遡って消滅させる

「解除」と解釈していた実態に合わせられました。


 この点からは、履行が終われば、つまり財産を受け取っていれば、

書面にする必要は無いことになります。


・不動産


 贈与の対象が不動産の場合、法務局へ登記の手続きも行うことになります。

 登記とは、権利の存在と状況を世間一般に公表する制度ですが、

登記の内容を変更するには、厳密な手続きが定められています。


 所有権が移転したと登記を申請する際、贈与があったと示すために、

「登記原因証明情報」として、贈与契約書を使用することが一般的です。

 申請を受け付ける法務局としても、証明するものを求めるわけです。


 こうして贈与契約書どおりに不動産の登記をしておけば、

もともとの所有者が二重に権利を移転するような事態が生じても、

登記を備えた者が優先される効果もあります。


 登録制度がある自動車でも、同様の理由が当てはまります。


・紛争防止


 では、金銭や貴金属の贈与に、契約書の意味はないのでしょうか。

 確かに何事もなければ、贈与の当事者に不都合はないでしょう。


 しかし、当事者同士の間で、贈与を巡って争いが生じてしまった場合、

例えば、贈与した財産の数量が契約よりも実際には少なかったり、

もともとの所有者が財産を返還を求めてくることが考えられます。

 また、当事者が亡くなって相続人が権利義務を相続した後に、

贈与があったかなかったかでもめる場面もありえるでしょう。


 こうした事態に対処するため、予め贈与契約書を当事者間で作成しておけば、

それが証拠になり、相手方を説得する材料になります。

 説得できず、裁判を起こされても、重要な物的証拠として扱われます。


 もっとも、契約書があるから必ず安心というわけではなく、

契約に従って実際に財産が移転したかどうかを巡って争いになることや、

当事者に契約を結ぶ意思があったかどうかも争いになりえます。


・調査対応


 さらに、贈与の当事者以外から、贈与について確認されることも起こります。

 そんな第三者は通常、税務署であり、税務調査の一環として行われます。


 調査の対象は、契約内容である贈与に対する贈与税だけでなく、

贈与した人が亡くなったときに課される相続税に関連して、

過去に実施した生前贈与にも及ぶものです。


 そうした調査に対応するため、過去の贈与を説明する証拠として、

贈与契約書は大変に有効なものです。


 ただし、こちらもやはり、契約書があるから必ず認められるとは限らず、

実際の財産移転の事実や契約当事者の意思が否定されるため、

贈与が無かったと判断されることはあります。


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