養子の子どもが代襲相続するのは、養子縁組と出生の時期しだい
- 真本 就平
- 2024年4月23日
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世の中には様々な事情で、成人を養子に迎えることがあります。
その養子には自分の子どもがすでにいることもあります。
このような家族で想定される相続は、養親が亡くなった後に養子が引き継ぎ、
その養子が亡くなった後は、その子に引き継がれるものでしょう。
しかし、養子が先に亡くなってしまい、その後に養親の相続が起こった場合、
養子の子は一般的には孫と見られるものの、養親の相続人になるためには、
一定の要件を満たす必要があります。

画像の左側をご覧ください。
この家族に起こった出来事について、①~⑤の順番を付けています。
① BとCの間に長男Dが誕生
② Aが養親、Bが養子となる養子縁組
③ BとCの間に二男Eが誕生
< 年月が流れる >
④ Bが死去 … Bの相続については省略します
⑤ Aが死去 → Aの相続について、説明します
Bのように本来相続人となるはずだった人が、すでに亡くなっていたときは、
民法に従い、亡くなった人の子がその亡くなった人の代わりに相続人になります。
これを「代襲相続」「だいしゅうそうぞく」と言います。
ただし、代襲をする子が亡くなった人の「直系卑属」であるという条件を
実は満たす必要があります。(民法第887条第2項)
「直系卑属」「ちょっけいひぞく」とは、
直接の親子関係でつながる親族で、本人より後の世代の人を指します。
血縁関係のある親族の間柄であれば、孫は直系卑属に当たりますので、
特に問題となることはありません。
しかし、養子縁組が関係すると、単純には相続人が定まりません。
「 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、
血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」
という規定が民法にあります。(第727条)
そのため、養子縁組をする前から生まれている養子の子どもと養親の間に
親族関係が生じることはないとされています。
画像の左側のDは、BがAの養子になる前に生まれたため、
Aとの間に親族関係は生じず、直系卑属ではないとされます。
このことから、Aの相続においては、Dに代襲相続が認められません。
これに対し、Eは、BがAの養子になった後に生まれたことで、
Aとの間に親族関係が生じ、直系卑属になります。
そのため、Aの相続において、Eは代襲相続により相続人になります。
一方、画像の右側はどうでしょうか。
起こった出来事について、①~⑤の順番は変わりません。
ただ、左側と比べると、C(Bの妻であり、DEの母)がAの実子になっています。
Aからすると、Bが婿養子になります。
このとき、BがAの養子になった後に生まれたEが、Aの直系卑属であり、
Aの相続において相続人になることに、変わりはありません。
BがAの養子になる前に生まれたDは、と言うと、
やはりBを通してAの直系卑属になることはありません。
しかし、Aの子であるCの子であること(普通に言えばAの孫)から、
Dは生まれたときから、Aの直系卑属になっています。
すなわち、DはCを通してAの直系卑属であるため、
Aの相続において、Dも代襲相続により相続人になるわけです。
Cも存命ならば、子であるCは当然にAの相続人であるため、
画像の右側では、Aの相続人はCDEになります。
なお、相続税に関係する例示ではありますが、
国税庁がホームページでこのことを取り上げています。 → リンク